論文の「はじめに」は、いざ書こうとすると手が止まりますよね。
最初の一文は何から始めるのか。背景はどこまで書くのか。「本研究の目的は〜」だけでは短すぎる気もする。
でも、はじめにでやることは意外とシンプル。
読者に
- 「なぜこの論文を読むのか」
- 「この先で何が分かるのか」
伝えてあげる。
これができれば、書き出しで迷いにくくなります。
この記事では、論文の「はじめに」に必要な構成を図解し、レポートにもそのまま使える例文を紹介します。

とさか (登坂 圭吾)
- 国立大学の院卒。修士論文は100ページ超え
- 研究開発職として、社内の技術文書コンテストで優勝
論文の「はじめに」とは?
「はじめに」は、論文全体の見取り図を最初に示すパートです。
この論文が扱うテーマ、問題、目的、そして進み方を、読者に伝えます。
たとえば、いきなり「SNSは若者に影響を与える」と書かれても、読み手はこう思います。
- どんな影響?
- なぜ今それを調べるの?
- この論文は何を答えるの?
はじめには、その疑問を先回りして解消するパートです。本文を迷わず読んでもらうための地図だと考えると分かりやすいですね。
「はじめに」で読者に渡す地図
1. 背景
なぜ、このテーマが気になるのか
2. 課題
何がまだ分かっていないのか
3. 目的
この論文で何を明らかにするのか
4. 本文の予告
どんな順番で説明するのか
研究論文では、先行研究と研究の不足点を丁寧に扱うこともあります。一方で、授業レポートなら、背景・問い・目的だけで十分な場合もあります。
まずは、指定された形式や先生の指示を最優先にしてください。そのうえで、以下の型を使うと迷いません。
上手い文章で評価を上げたいなら、本で学ぶのがおすすめです。文章術の本まとめはこちら。

はじめにの基本構成は4つ
書き出しから順に、次の4つを並べます。
- 背景:テーマに関わる状況や、すでに分かっていること
- 課題:まだ十分に扱われていないこと、考えるべき問い
- 目的:この論文で明らかにすること
- 本文の予告:このあと、どのように論じるか
1. 背景:テーマの外側から入る
背景では、テーマに関する「状況」を示します。
統計、先行研究、社会の変化、授業で扱った議論などが材料になります。
近年、大学生が授業外で学習する機会として、動画教材や学習アプリの利用が広がっている。
この一文だけでは、まだ論文のテーマは広いままですが、それでOK。
次の「課題」で、少しずつ焦点を絞ります。
2. 課題:だから何を考えるのかを示す
背景を書いたあとに必要なのが、「でも、ここにはまだ問いがある」という一文です。
背景だけで終わると、説明文になります。論文にするには、検討したい問題を立てる必要があります。
しかし、動画教材の利用が、学生の学習習慣にどのような影響を与えるかは、利用時間だけでは判断できない。
「しかし」「一方で」「ただし」は、話を狭めるときに便利です。
ただし、先行研究を扱う論文では、根拠なく「研究されていない」と書かないようにしましょう。先行研究を調べたうえで、きちんと引用して示せると良いですね。
3. 目的:この論文の答えを1文で決める
はじめにで一番大事なのは、目的です。
目的がぼんやりすると、本文もぼんやりします。逆に、目的が決まると、調べることも、残す情報も決まってきます。
目的は「広いテーマ」ではなく「答える問い」にする
△ 本論文では、動画教材について考察する。
○ 本論文では、大学生の動画教材の利用が、授業外学習を続けるうえでどのような役割を果たすのかを考察する。
後者なら、読み手は「利用時間ではなく、学習を続けることに注目する論文なのだな」と分かります。

目的が明確なら、レポートが書きやすくなります
4. 本文の予告:読み手を置いていかない
長めの論文や卒論では、最後に本文の流れを短く予告します。
「第2章では〜、第3章では〜」と機械的に並べても構いません。ただ、各章の役割が伝わるように書くと、読み手はもっと楽になります。
まず動画教材を用いた学習の特徴を整理する。次に学生へのアンケート結果をもとに利用場面を検討し、最後に継続的な学習との関係を考察する。
800字程度の短いレポートなら、この予告は省いても大丈夫です。必要な情報だけを残すことを優先しましょう。
そのまま使える「はじめに」の例文
ここまでの4つをつなげると、次のようになります。
テーマ例:動画教材は大学生の学習習慣にどう関わるか
近年、大学生が授業外で学習する機会として、動画教材や学習アプリの利用が広がっている。動画教材は、時間や場所を選ばず学べる点で便利である。一方で、視聴するだけでは学習が継続するとは限らず、利用のしかたによって効果は異なると考えられる。そこで本論文では、大学生の動画教材の利用が、授業外学習を続けるうえでどのような役割を果たすのかを考察する。まず動画教材を用いた学習の特徴を整理し、次に利用場面を検討したうえで、継続的な学習との関係を論じる。
読みやすい「はじめに」は、背景から目的まで、読者が迷わずたどれる順番になっています。まずはここを満たせば十分です。
「はじめに」が書けないときの3つの対処法
- 結論や本文を書いてから戻る
- 背景を長く書きすぎない
- 目的文だけ先に完成させる
結論や本文を書いてから戻る
最初は、仮の「はじめに」で十分です。
本文を書いているうちに、問いや結論が少し変わることはよくあります。むしろ、本文と結論が固まってからの方が、論文の全体像を正確に説明できます。
目的文だけ仮置きし、本文を書いたあとに直す進め方で問題ありません。
背景を長く書きすぎない
テーマについて知っていることを全部書くと、「はじめに」が本論のように長くなります。
背景は、目的を納得してもらうために必要なぶんだけ。細かい説明やデータは、本文に回した方が読みやすいです。
目的文だけ先に完成させる
どうしても進まないなら、真ん中の「目的」から書きます。
「本論文では、〇〇について、△△の観点から考察する。」と1文で決める。すると、その前に必要な背景、その後に必要な本文の順番が見えてきます。
文章は、書きやすい部分から組み立てて構いません。
段落をどう組み立てるかも含めて知りたい方は、先にパラグラフの考え方を押さえると書きやすくなります。


「はじめに」だけでなく、本論・結論まで含めた全体の組み立て方は、こちらの記事で図解しています。


論文の「はじめに」でよくある質問
- はじめにの文字数はどれくらいですか?
-
指定があるなら、それに従ってください。
指定がない場合は、論文全体の1割前後が一つの目安です。ただし、文字数を埋めるより、背景・課題・目的が伝わることを優先しましょう。
- 「はじめに」と「序論」は同じですか?
-
多くの場合、同じ意味で使われます。
ただし、大学や分野によって見出しの名称、入れる内容は少し異なります。過去の論文や提出要領を確認するのが確実です。
- はじめにに自分の体験やきっかけを書いてもいいですか?
-
課題の指定があり、テーマを選んだ経緯が必要なら書いて構いません。
ただし、個人的な感想で終わらせず、研究・考察する問いへつなげることが大切です。
まとめ:はじめには「本文の地図」を書く
論文の「はじめに」は、次の4つで組み立てれば大丈夫です。
- 背景:なぜテーマを考える必要があるのか
- 課題:何が問いになるのか
- 目的:この論文で何を明らかにするのか
- 本文の予告:どんな順番で説明するのか
まずは、目的文を1つ書いてみてください。
その目的に必要な背景と問いを前に置けば、「はじめに」は少しずつ形になります。
論文やレポートだけでなく、仕事の文書にも使える文章の組み立て方を知りたい方は、こちらにまとめています。







