ExcelでもCopilot(コパイロット)が使えるようになった。生成AIがデータ分析してくれる時代の到来だ。
だがCopilotも万能ではない。驚きもあれば失望もある。
本記事では、ExcelのCopilotの基本の使い方を丁寧に解説する。使い方を一通り知っておくことで応用範囲が広がるはずだ。
最近ではついにPythonによる分析が実装された。Copilotを使うことで自分のスキルを超えた分析までできるようになった。自分は日本語で指示するだけで、コードを書いて、結果を教えてくれる。
この記事を書くにあたって、プロンプトをかなり試行錯誤した。失敗談も載せるので、同じ失敗は避けてほしい。
ExcelのCopilot(コパイロット)の開き方
まず前提として、ExcelのCopilotを起動するには、ファイルをOneDriveかSharePointに入れる必要がある。ファイルをアップロードしてから開こう。
[ホーム]タブから起動する
[ホーム]→[Copilot]を押すと、「Copilotウィンドウ」が立ち上がる。

対話型生成AIだ。チャット形式で指示して使える。
セル選択から起動する
セルを選択すると、Copilotボタンが現れる。

このボタンを押すことで、セルの数式について聞いたり、Copilotに質問したりできる。

セル選択から質問した方が、Copilotの回答精度が上がる場合もある。
なお、Copilotボタンが邪魔な時は、[このドキュメントを再度開くまで非表示]で消すこともできる。
下準備|テーブルの作成
Copilotに分析させるデータは、「テーブル」形式にするのがおすすめ。必須ではないが、Copilotがデータ範囲を認識しやすくなる。
やり方は簡単。データの範囲を選択して、Ctrl + T を押す。

「テーブルの作成」ウィンドウが開く。たいていは一番上の行が見出しになっていると思うので、「先頭行をテーブルの見出しとして使用する」にチェックしてOKを押す。

これでテーブルに変換された。

最初だけひと手間いるね
ExcelのCopilotを習得するなら、Excel×Copilot AI仕事術がおすすめ。現時点で唯一、Excelに特化したCopilot解説本だ。Excelを使うことが多い方はぜひ読んでほしい。
Copilot in Excelの使い方(12の活用事例)
Copilotに指示すると、テーブルのデータを分析したり、変更を加えたりしてくれる。指示する前には、正しいデータ範囲が認識されているかチェックしよう。


基本の活用方法として、次の12の事例を紹介する。
- データを分析する
- グラフを作成する
- 数式を作成する
- 集計行を追加する
- データの抽出・並べ替え
- 条件付き書式を設定する
- データクリーニング
- Webのデータを表にする
- アンケートを集計する
- 文字列を操作する
- マクロを作成する
- Pythonで高度な分析をする
データを分析する
Copilotには標準的なプロンプト(指示)が用意されている。まずは、[データの分析情報を表示する]を使ってみよう。


分析結果が返ってきた。といっても、日付別の売上のグラフを作成されただけだが…。


便利なのはここから。続けて[すべての分析情報をグリッドに追加する]を押すと、


新しいシートにグラフがズラッと作成された。


データを一気に可視化できた。意味のないグラフもあるが、取捨選択して使うのはありだ。



自分で作るより何倍も速い
今回は標準のプロンプトを使ったが、オリジナルの指示を出してもいい。例えば、
- 「相関関係の強いデータはある?」
- 「データに傾向はある?」
など、知りたいことを自由に聞いてみよう。
グラフを作成する
自分で好きなグラフを作成することも可能だ。例えば、「日付とPVのグラフを作成して。」と入力すると、さっとグラフを作ってくれた。


[+新しいシートに追加]を押せば、シートに挿入される。
ちなみに指示を出すときは、テーブルの見出しと完全に一致してなくてもOK。下の画像の例では、”PV”とだけ指示しているが、ちゃんとどの列のことかCopilotが判断してくれる。


一言一句同じに入力しなくていいのは、かなりありがたい。



ほんと、人間に指示してるみたい
数式を作成する
Copilotなら数式をさっと作成してくれる。例えば、「売上利益率の前日比を出して。」と指示すると、複雑な数式をすぐに作ってくれた。


利益率や前日比など、言葉の定義を説明しなくても意図を汲み取ってくれるので、やはり生成AIはすごいと感じる。
ただし、「3日間の移動平均を計算して」と指示したときは、どうも計算結果が自分の意図と異なっていた。Copilotを盲目的に信じるのではなく、必ず検算はしよう。上司や顧客に報告したときに痛い目を見る可能性がある。
集計行を追加する
Copilotに「集計行を追加して」と指示すると、テーブルへの追加を提案してくれる。


[適用」を押すと、テーブルに集計行が追加される。


集計行では、列の平均値や最大値をプルダウンで選択して表示できる。さっと確認するのに便利だ。
データの抽出・並べ替え
データ抽出もお願いできる。「利益が10000以上を抽出して」と指示すると、フィルターを提案してくれるので、[適用]を押せばテーブルがフィルタリングされる。


[元に戻す]を押せば、変更を解除することもできる。(Ctrl + Zと同じ)


他にも、「優先度1:PVが多い順、優先度2:CTRが多い順、で並べ替えて」といった並べ替えも依頼できる。


指示通りにテーブルの順番が変わった。


条件付き書式を設定する
特定の数値を目立たせたいときもある。そんなときは、「利益が60000以上を太字にして」と指示する。


データの特徴を掴みやすくなった。



これ自分で設定すると結構めんどくさいので、助かる
他にも赤字やフォントサイズの変更も可能だ。書式の変更は、WordやパワポのCopilotでは出来ないので、かなり嬉しい機能だ。
データクリーニング
データクリーニングは、表記ゆれなどを自動で見つけてくれる機能だ。
Excelファイルを開いたとき、データに表記の不整合などがある場合、「Copilotでデータをクリーニングする」という表示が出る。


[候補の表示]を押すと、Copilotウィンドウで修正すべき点を教えてくれる。


修正点に納得したら「適用」を押すことでCopilotが修正してくれる。直す必要がなければ「無視」を押すといい。
データクリーニングすることでCopilotの分析も精度が上がるため、表示されたらぜひやっておこう。



データクリーニングは地味に助かってる
Webのデータを表にする
CopilotにWeb上のデータを調べてもらい、それをExcelの表にすることもできる。
2015~2020年の日本の合計特殊出生率のデータを作成したい
と指示すると、データを引っ張ってきた。




[新しいシートに挿入]を押すと、セルにテーブルが挿入された。


調査と表の作成まで一気にやってくれて、便利だ。
ただし、重要な資料であれば、数値が合っているかの裏は取ろう。
アンケートを集計する
最近特に助かったのが、アンケートの集計だ。
例えば、次のようなアンケートがあったとする。(これはダミーデータ)


気になることをCopilotに尋ねてみる。例えば、
D列について、利用頻度で一番多いのはどれ?


利用頻度を集計して、答えを教えてくれた。[新しいシートに追加]を押せば、ピボットテーブルを追加してくれるので、自分で加工もできる。
アンケートの集計はけっこう手間なので、自然な会話で答えをどんどん教えてくれるCopilotにはかなり助かった。



ほんと、アシスタントに聞いてるみたい
文字列を操作する
Excelでデータを整形したいときも、Copilotが役立つ。
例えば、次のような氏名(ダミーデータ)を「姓」と「名」に分けたいとする。


手作業だとかなり面倒だ。Copilotにお願いしよう。
氏名を姓と名に分割したい。数式列を追加して。
と指示すると、やり方を教えてくれた。
このとき、プロンプトに「数式列を追加して」と入れるのがポイントだ。こうすることで、次の[列の挿入]が現れる。




[列を挿入]を押すと、テーブルに列を追加してくれた。


これまで手作業でやっていたことをCopilotにお願いすると、かなり効率が上がるかも。
マクロを作成する
Copilotはマクロの作成も得意だ。やりたいことを、「VBAコードを書いて。~~」と指示してみよう。指示は自然文で構わない。


すぐにコードを生成してくれた。ちょっと見づらいので、Copilotウィンドウの端っこをドラッグして広げてみよう。


短い指示から、意図をくみ取ってコードを書いてくれている。あとはこれをVBAエディタに貼り付けて、シート名などを修正すればOKだ。(詳しい手順は割愛するが、分からなければCopilotに聞いてみよう)
私は生成AIのおかげでマクロを扱えるようになった。これまで何度も挫折してきたが、Copilotに聞けばコードがあっという間に完成する。コードが読めさえすればいい。



自分で書くより100倍くらい速い
Pythonで高度な分析をする
最近日本語でも使えるようになった機能。Pythonの知識がゼロでも、自然言語で指示するだけで様々な分析をおこなってくれる。
Copilotウィンドウで、[高度な分析]を選択するか、


Pythonを使用して、〇〇して
と指示してみよう。※現時点ではWeb版でしか動作しないかも。


開始しますか?と聞かれるので、[高度な分析の開始]を押す。
すると、Copilotがコードを自動で生成し、エラーチェックし、結果を表示してくれる。


AIのすごさを実感する。自分は指示するだけで、全部やってくれる。
Pythonを使用すると、普通にCopilotに指示するよりも、グラフの描画などをイメージ通りに実行してくれた。かなり使い道が広そうだ。



いろいろできて楽しい
Copilot in Excelが使える条件
ExcelのCopilotを使うための方法は3つある。


個人で一番ハードルが低いのは、Microsoft 365 Personal/Familyだろう。今までOfficeを契約していた人は、追加料金なしでCopilotも使うことができる。ただし月に60回までだ。
個人で無制限にCopilotを使いたい場合は、Copilot Proの契約が必要となる。
企業であれば、法人向けMicrosoft 365 Copilotの契約とユーザー登録が必要だ。
Web版とデスクトップ版の違い
Excelには、
- Webアプリ(ブラウザで動作)
- デスクトップアプリ
がある。
Copilotについて言えば、Web版の方が新機能の実装が早い。特にExcelはその傾向が顕著で、現時点でWeb版でしか使えない機能もいくつかある。
気になる人はWeb版を使うといいが、デスクトップアプリが使い慣れているならそれでもいいだろう。



私はデスクトップアプリ派
契約しているのにCopilotが使えない場合
Copilotを契約すると、Web版アプリではすぐに使えるようになる。
ただ、デスクトップ版アプリではCopilotボタンが無い、もしくはグレーアウトしている場合がある。そんなときは、次の方法で対応可能だ。(▼ボタンで展開できる)
デスクトップアプリでCopilotボタンが無い場合
- 組織の場合は、情報システム担当へ
-
私が会社で有料版Copilot(Microsoft 365 Copilot)を使い始めてすぐは、デスクトップアプリでCopilotが使えなかった。WEBアプリ(SharePoint)では動くので、Copilotの契約ができているのは間違いない。
しばらくすると、情報システム課からデスクトップアプリ版Copilotのインストール案内が来て、使えるようになった。
なので、会社の場合は、まず情シスの担当者に相談してみよう。
- 個人の場合は、ライセンス更新
-
個人向けの有料版Copilot(Copilot Pro)の場合、まずはライセンスの更新を確認しよう。
[ファイル]→[アカウント]→「ライセンスの更新」で、私は再起動後に使えるようになった。
特にExcelの場合、SharePointかOneDriveに保存しないとCopilotが使えない場合がある。ローカルではなく、一度クラウドに保存して開き直してみよう。
Copilotを起動するショートカット
ExcelのCopilotを起動するショートカットは、今のところ無い。
なので私はクイックアクセスツールバーに登録している。


これで、Alt + [数字]で開くことができる。(数字は、左から数えたときの順番だ)
この場合、左から5番目のアイコンなので、Alt + 5 で開くことができる。
リボンへの登録は、[ホーム]の[Copilot]で右クリックして、「クイックアクセスツールバーに追加」を押せばいい。


ショートカットを使って一瞬でCopilotを開けるようにしておきたい。
ExcelのCopilotを使った感想
ExcelのCopilotが登場したばかりの頃は、「まだできることが限られるな」という印象だった。
グラフの作成などでも苦戦し、凡例付きなどの複雑なグラフの作成を指示すると、「申し訳ありませんができません」という回答が頻発した。
しかし、半年ほどで目覚しい発展を遂げ、ついにPythonによる分析までできるようになった。こうなるともはや、Copilotを使うことで自分のスキルを超えた分析ができる。
単なる時短にとどまらず、アウトプットの質が向上するというのは、すごいことだと思う。
あと地味ではあるが、数式の作成も便利だ。ちょっと複雑な計算式を入れたいときは、意外と悩む。ググったけど結局よく分からん、みたいことがこれまでよくあった。しかしCopilotに聞けば、こういった調べる時間が一切不要だ。
将来的には、Copilotは標準搭載で誰もが使えるようになるだろう。生成AIの扱いもスキルの一つなので、今のうちに慣れてスキルを磨いておきたい。



これからの新入社員は生成AIを当たり前のように使うんだろうな
まとめ
Copilotを使い始めたばかりの人は、書籍で一度体系的に学ぶことをおすすめする。こちらの記事にCopilotのおすすめ本をまとめたので、ぜひチェックしてみてほしい。





基礎を学んでおけば、その後の成長スピードが段違い
また、Excel以外のCopilotの使い方についてもこちらの記事にまとめたので、参考にしてみてほしい↓

